2015年4月にスタートした【子ども・子育て支援新制度】により保育制度の何が変わったのか?新制度で新たに加わった認可施設を中心に、保育制度の全体像を解説します。まずは保育制度の概要が一目で分かる下記表をみてください。
認可区分 | 制度区分 | 保育施設 | 幼児教育施設 |
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認可 | 施設型 | 認定こども園 | |
認可保育所 | 施設給付型幼稚園 | ||
地域型保育 | 小規模保育 家庭的保育 事業所内保育 居宅訪問型保育 |
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その他 | 認可幼稚園(旧制度) | ||
認可外 | 自治体による 独自認定制 |
東京都の認証保育所など | |
指導監督基準 | 託児所(ベビーホテル) ベビーシッター事業者 |
幼稚園類似施設 International Preschool |
|
設置の届出 | |||
届出不要 | 定員5人以下の保育施設 事業所内保育施設 |
※幼児教室 |
保育制度を大きく4つに分類
上の表では【認可の有無】と【保育の目的】により、施設を大きく4つに分類しています。縦軸は認可を受けた「① 認可保育施設」と認可を受けていない「② 認可外保育施設」に分類し、さらに制度の違いにより細分化しています。横軸は乳幼児の保育(託児)を目的とした「③ 保育施設」と幼児教育を目的とした「④ 幼児教育施設」に分類しています。
この分類方法により制度上の位置づけが明確になり、全体が把握しやすくなります。それではこの表を参考にして、保育施設の違いを見ていきましょう。
認可保育施設の種類と支給認定
2015年4月にスタートした子ども・子育て支援新制度では、認可保育施設を「施設型給付・地域型保育給付」の2つに分類しています。施設型給付とは、都道府県による認可事業である「認定こども園・認可保育所・幼稚園」の3つを再編した従来型の施設への助成制度です。地域型保育給付とは、市区町村による認可事業として、待機児童全体の8割を占めるといわれる0~2歳児を預かる施設を助成する制度として新設されました。
地域型保育には「小規模保育・家庭的保育・事業所内保育・居宅訪問型保育」の4つのタイプがあります。この制度により、今まで認可外であった小さな施設であっても、一定基準をクリアすれば助成が受けられる認可施設へ移行できるようになりました。
◎支給認定
新制度の「認定こども園・認可保育所・幼稚園(施設給付型)・地域型保育」を利用する際には、支給認定の手続きが必要となります。支給認定には3つの認定区分があり、下記のとおり利用できる施設が変わります。
- 1号認定:満3歳以上で教育を希望される場合【幼稚園・認定こども園】
- 2号認定:満3歳以上で保育の必要な事由に該当し、保育所等で保育を希望される場合【保育所・認定こども園】
- 3号認定:満3歳未満で保育の必要な事由に該当し、保育所等で保育を希望される場合【保育所・認定こども園・地域型保育】
施設型給付の種類
◎認定こども園
認定こども園とは、幼稚園と保育所の2つの機能を備えた幼保一体化(幼保一元化)された施設で「幼保連携型・幼稚園型・保育所型・地方裁量型」の4つのタイプがあります。
2006年に始まったこの制度は、0歳〜小学校就学前の子どもであれば、保護者の就労の有無にかかわらず入園でき、多様化する保育ニーズにマッチした優れた制度ですが、施設側の負担が大きい割に財政支援が十分でなく、また事務的な煩雑さも解消されず、施設の数があまり増えませんでした。
そこで新制度では、認定こども園に関連する法律を一部改正するなど、今後の普及に向けた新たな取り組みが始まっています。
◎認可保育所
認可保育所とは、「児童福祉法に基づく児童福祉施設で、国が定めた設置基準を満たし、都道府県知事(政令指定都市・中核市の市長を含む)に認可された施設」のことで、定員は原則60人以上(条件付きで20人以上)です。
0歳〜小学校就学前の子どもで、保護者が仕事や病気などの理由により保育ができない場合に入園できますが、実際には保育所の数が足りず、多くの待機児童が発生しています。保育行政の中心的役割を担ってきた認可保育所ですが、新制度の小規模保育所などの登場により、地域型保育との連携が今後の課題になります。
なお、保育所とは児童福祉法上の名称で、通称として保育園が使われます。全国的な傾向として、公立を保育所、私立を保育園と呼ぶ傾向があるようです。
◎幼稚園(新制度へ移行した施設給付型幼稚園と旧制度の認可幼稚園)
幼稚園とは、都道府県知事から認可を受けた幼児教育施設で、満3歳〜小学校就学前まで幼児教育を行ないます。ちなみに、認可を受けていない無認可幼児施設(幼稚園類似施設)については、正式には幼稚園という名称が使えないため「幼児園」などの名称を使う場合があります。
幼稚園の新制度への移行については、少し分かりづらい状態になっています。もともと新制度では、幼稚園を認定こども園もしくは施設型給付の幼稚園へ移行する予定でしたが、定員数の多い幼稚園が新制度へ移行した場合、助成額が減ってしまうなどの問題が判明し、現場はかなりの混乱したようです。
そのため2015年の開始時点では、新制度(施設型給付)への移行を見送り、旧制度(私学助成)に留まる私立幼稚園が多数を占めています。幼稚園については、できるだけ速やかに新制度の見直しを行ない、制度を一元化して欲しいと思います。
地域型保育給付の種類
◎小規模保育
小規模保育とは、定員6人以上19人以下の少人数で保育を行う施設で、0〜2歳の子どもが対象です。都市部の駅前などに設置された小さな施設が、今後は小規模保育所として認可されるため、待機児童対策の切り札として効果を発揮しそうです。
認可を受けた小規模保育所の設置により、3歳未満の受け皿がかなり増えそうですが、満3歳になると認可保育所または幼稚園へ編入する必要があるため、卒園後の進級先の確保が今後の課題となりそうです。
◎家庭的保育
家庭的保育とは、定員5人以下の保育施設で、0〜2歳の子どもが対象です。保育者の自宅などを活用して家庭的な雰囲気の中で保育を行ないます。制度としては、子ども3人につき保育従事者1人が必要で、さらに補助者を1人置くことで最大5人まで保育が行なえます。
この制度は、もともと地方自治体(市区町村)の「家庭福祉員・保育ママ」と呼ばれた制度が、2010年の児童福祉法改正により「家庭的保育事業」として制度化されたものを引き継いでいます。
家庭的保育を行うには、市区町村が定める保育研修を修了し、自治体から認定を受けなければなりません。認定資格の条件は自治体により多少違いがありますが、保育士・看護師・幼稚園教諭などの有資格者が認定されるケースが多いようです。
◎事業所内保育
事業所内保育とは、企業や病院が従業員の子どもを預かるために設置した施設に対して、定員数の一定枠を地域に解放して、従業員の子ども以外にも保育を提供する場合に助成が受けられるようにした制度です。
◎居宅訪問型保育
居宅訪問型保育とは、自治体が実施する研修を受けた保育者が、保育を必要とする0〜2歳の子どもの自宅(居宅)を訪問して、1対1で行なう保育制度です。この制度の対象となるのは「障害・疾病等の程度を勘案して集団保育が著しく困難であると認められる場合」など、給付条件がかなり限定されています。
認可外保育施設の種類
認可外保育施設とは、児童福祉法に基づく認可を受けていない保育施設の総称で、幼稚園以外の幼児教育施設も含まれます。認可外保育施設については、様々なタイプがありますが、大きく分けると以下の4つに分類できます。
- 自治体により独自認定された施設(認証保育所)
- 設置の届出が必要な施設
- 指導監督基準を満たす施設
- 届出が不要な施設
◎自治体により独自認定された施設【認証保育所】
児童福祉法の認可保育所だけでは多様化する保育ニーズに対応しきれなくなり、1990年代後半には都市部で多くの待機児童が生まれました。そこで東京都では、独自基準による認証制度を2001年より開始しました。これが東京都の「認証保育所」です。
都市部のニーズに対応するため、定員や施設面積などの設置基準を緩和し、独自の認証基準を満たした施設を助成することで、駅から近い立地に開所時間の長い施設が数多く作られました。同じような自治体の独自認定制度は、横浜市の「横浜保育室」、川崎市の「川崎認定保育園」、仙台市の「せんだい保育室」、堺市の「さかい保育室(堺市認証保育所)」、浜松市の「浜松市認証保育所」などがあります。
◎設置の届出が必要な施設
2002年の児童福祉法改正により、認可外保育施設を設置した場合には、1ヵ月以内に都道府県知事等へ「設置の届出」が必要になりました。多くの託児所・ベビーホテル・ベビーシッター派遣業がこれに該当します。
また、幼稚園以外で幼児教育を目的とした施設であっても「1日4時間以上、週5日、年間39週以上、施設で親と離れることを常態としている」場合は、認可外保育施設として扱われるため、幼稚園類似施設やインターナショナル・プレスクールなども通常届出を行ないます。
届出が義務づけられている施設には、児童福祉法に基づく立入調査が行なわれ、適切な運営がされているか調査が行なわれます。
◎指導監督基準を満たす施設
届出が必要な認可外保育施設のなかでも「認可外保育施設指導監督基準」を満たす施設に対しては、都道府県知事等により『指導監督基準を満たす旨の証明書』が交付されます。この証明書が交付された施設であれば、認可外であっても一定レベルの質と安全が確保されているため、安心して子どもを預けることができます。
なお、この証明書を交付された施設については、各自治体のホームページで公開されています。認可外保育施設を利用する際は、ぜひ一度確認してみてください。
◎届出が不要な施設
都道府県への届出が不要な認可外保育施設とは、定員5人以下の保育施設(ベビーシッターを含む)、従業員の子どものみを預かる事業所内保育施設、店舗などの顧客の子どもを預かる保育施設(ショッピングセンター・診療所等)、半年を限度に設置された保育施設(スキー場・イベント会場等)などがこれに該当します。
ただし、個人のベビーシッターについては、今後届出を義務化する方針が厚生労働省より示されています。
◎その他の保育制度
子ども・子育て支援新制度の「地域子ども・子育て支援事業」には、ファミリー・サポート・センターという相互援助組織があります。地域で子育てを応援する制度で「育児の援助を受けたい人(利用会員)」と「育児のお手伝いをしたい人(サポート会員)」が事前に会員となり、地域の中で助け合う有償ボランティア活動です。
例えば、保護者の病気や急用の場合に子どもを預かってもらったり、保育所や学校まで子どもを送迎してもらうなどの援助が受けられます。興味がある方は、居住地域の自治体ホームページを確認してみてください。